向日さん。中等部時代に、ペアを組んだ経験もあり、それなりに近しい仲でもあると思う。・・・俺にしては。だが、最近はそれも崩れてきた。


「向日先パーイ!」

「おぅ、どうした。。」


何故か、この2人は仲が良い。しょっちゅう、2人で話しているところを見かける。しかも、明らかに周りを気にして。その上、向日さんはの名前を呼び捨てだ。・・・イチャつくなら、部活外にしてくれ。


「あ、あの・・・。やっぱり・・・・・・・・・。」


も突然、小声になって、向日さんに何かを話している。・・・一体、何の話をしてるんだ?
が、俺もそれを割って入るほど、子供じゃないつもりだし、少し遠くから眺めている。


「またかぁ・・・。」

「スミマセン・・・。」

「ま、・・・・・・・・・・・・・・・よな。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。気にすんな、な?」


所々だけ聞こえた話。それらは断片すぎて、本当に内容の見当がつかない。・・・ったく、何の話なんだよ。
と少しイライラしていたら、突然が泣き出した。


「おい!?!」


さすがに、向日さんも慌てて、の様子を周囲に悟られないようにと、キョロキョロし始めた。
俺も、器用に目を逸らし、何も見ていなかったかのように振舞った。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「いいって!大丈夫。・・・・・・・・・・・・。」


そして、また、2人に目を向けると、向日さんがの頭をずっと撫でていやがった。
・・・だから、どういう仲なんだよ?その前に、はどうしたんだ?
向日さんに撫でられていても、泣き止まなさそうなを見て、俺はやっとそっちに向かった。


「何してるんですか、こんな所で。」

「「うわ!日吉?!」」


・・・2人して、同じ反応って。俺だけが取り残されたみたいで、少し苛立った。


「ううん、何でもないよ!ですよね、向日先輩っ!」

「おぅよ!何でもねぇったら、何でもねぇ。・・・で、日吉は何しに?」


今度は2人して、隠そうとしやがった。それにも、腹が立って、言ってやる。


が泣いてたじゃないですか。」

「み、見てたの?!」

「おい!!!」

「あ、すみません・・・。つい・・・。」


が、隠し事など、不得意な2人。あっさりとボロが出て、逆に憐れに思えてきた。だから、俺も少し落ち着けてから、聞いた。


「で、何かあったのか。」

「ううん、大丈夫。もう、大丈夫。さっきまで、ちょっと落ち込んでたんだけど・・・。」

「おう、良かったな。じゃ、俺は先行ってるわ!」

「あ、向日先輩・・・。ありがとうございます!」


が説明しようとしたとき、向日さんは急いで、コートへ走って行った。・・・相変わらず、変な人だ。
も、「ございます」って言ったけど、この場合、さっきまで話を聞いてもらってたんだから「ございました」じゃないのか?・・・相変わらず、よくわからない。


「・・・よかったのか?」

「うん。本当、もう大丈夫。ちょっと落ち込んでたから、いつも明るい向日先輩に、相談に乗ってもらってたんだけど。泣いたら、スッキリした。」

「そうか。」


は、そう言って、いつものように笑って見せた。・・・不思議なことに、さっきまでイライラしていた気持ちは何処かに行ってしまって、今は少し安堵感を持っていた。


「それに、日吉が心配してくれたから。元気出たよ?」

「馬鹿なこと言ってないで、俺たちも向こうに戻るぞ。」

「は〜い。」


俺は、地面にしゃがみ込んでいたに、手を差し出すと、は嬉しそうに返事をして、手を取った。もちろん、が立つまでで、その後、手を離して2人でコートに戻った。
・・・やたら、手や顔が暑かったのは、日照りの所為だ。




***** ***** ***** ****** *****




日吉とは、中等部時代に、ペアを組んだこともあって、2年の中じゃ仲のいい方だ。


「向日先パーイ!」

「おぅ、どうした。。」


で、それを当てにしてきたも仲がいい方だな。コイツは日吉が好きらしい。


「あ、あの・・・。やっぱり、日吉って私のこと、嫌いなんですかね・・・。」


話を聞くと、日吉はに冷たいらしい。でも、そんなの日常茶飯事だ。
俺なんか、ペアを組んでるとき、一応俺の方が先輩だって言うのに、あんな態度だ。


「またかぁ・・・。」

「スミマセン・・・。」

「ま、悲しいよな。でも、アイツ、そういうとこあるから。気にすんな、な?」


って言っても、やっぱり恋するには、相当辛いらしく、その場にしゃがんで泣き出した。


「おい!?!」


さすがに、俺も慌てて、特に日吉なんかに見られてないだろうな、とキョロキョロした。
日吉は視界に入りはしたが、こっちを見ている気配はなく、一安心した。


「すみません・・・いつも、泣いてばかりで・・・。」

「いいって!大丈夫。を泣かすような日吉が悪ぃよ。」


日吉が見ていないなら大丈夫だろうと、俺はの頭を撫でてやった。
でも、やっぱり俺じゃ力不足で、はずっと泣いていた。
・・・あ〜、くそくそ俺。どうしたらいいんだよ・・・。
は俺と日吉が仲いいからって、頼ってくれるけど、俺はこういう話、得意じゃねぇぞ?
侑士ら辺なら、何とかできるんだろうか・・・とか、考えていると。


「何してるんですか、こんな所で。」

「「うわ!日吉?!」」


いつの間にか、日吉が来ていた。俺も思わず、手を離し、もすぐに泣き止んだ。


「ううん、何でもないよ!ですよね、向日先輩っ!」

「おぅよ!何でもねぇったら、何でもねぇ。・・・で、日吉は何しに?」


が隠そうとしたから、俺も精一杯ごまかそうとした。なのに。


が泣いてたじゃないですか。」

「み、見てたの?!」

「おい!!!」

「あ、すみません・・・。つい・・・。」


隠し事など、不得意な。あっさりとボロが出て、すぐにバレちまった。
でも、すげぇよな、日吉。あんなに泣いてたをすぐに泣き止ましちまうなんて。
それほど、も日吉が好きなんだなぁ。


「で、何かあったのか。」

「ううん、大丈夫。もう、大丈夫。さっきまで、ちょっと落ち込んでたんだけど・・・。」


・・・って、俺、邪魔じゃね?なんて、今更気づいて、すぐに退散する。


「おう、良かったな。じゃ、俺は先行ってるわ!」

「あ、向日先輩・・・。ありがとうございます!」


、「ありがとうございます」じゃあ、2人きりにしてくれて「ありがとう」って言ってるようなもんだぜ?それもバレちまうんじゃないかと思ったが、それはこの2人の問題であって、やっぱり俺は邪魔だから、とダッシュで、この場を離れた。


「・・・・・・・・・。」

「うん。本当、・・・・・・・・・。ちょっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・スッキリした。」

「・・・・・・・・・。」


遠くから眺めると、がいつもの笑顔に戻っていた。良かったな。


「それに、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「馬鹿なこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・戻るぞ。」

「は〜い。」


日吉が地面にしゃがみ込んでいたに、手を差し出し、は嬉しそうに日吉の手を取った。手を繋いでいたのはが立つまでで、その後、2人は手を離してコートに戻って来た。
2人とも照れていたから、てっきり「ありがとうございます」の件がバレて、付き合うようにでもなったのかと思ったら、の報告によると、そうではなかったらしい。でも、は嬉しそうに報告していた。・・・ちなみに俺は、の相談に乗る係でもあり、報告を聞く係でもある。
ま、そんな俺からしちゃあ、お前らのことは応援してっから、日吉も頑張れよ。













頼れるお兄さん、向日さんです!(笑)でも、ちょっと抜けたとこもあるような気がします。それ故に、細かい所は気にしないという、大きな器の持ち主でもあると思うのです。
・・・などと、向日さん語りをしてしまうところでしたが(笑)。
こんな向日さんと日吉くんのコンビが好きなんです。なので、もう少し仲良い感じにしたいとも思ったのですが・・・日吉くんがこんな態度なので、仕方ないですね(笑)。

それにしても、日吉くんは一体、どんな冷たい態度を取ったのでしょう?・・・それは、たぶん、些細なことなんだと思います。でも、やっぱり、些細なことではないんです。
・・・・・・つまりは・・・。具体的に考えてるわけじゃないので、皆様にお任せします(汗)。

('09/11/07)